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２０１2年４月刊行　古田武彦・古代史コレクション１１

人麿の運命

ミネルヴァ書房

古田武彦

2013.09.17 校正　正誤表(服部和夫氏校正、有り難うございます）

頁	行	誤	正	備　　考
113	2	発足せねば	発見せねば	原書房版も同様古田武彦氏と調整

始めの数字は、目次です。「はしがきーー復刊にあたって」、はじめに、あとがき、および「写真家より敬白」は下にあります。

【頁】【目　次】

i はしがきーー復刊にあたって

iv はじめに

００１第一章　近江のまぼろし

　万葉探究の旅へ　近江大津宮の廃滅　忍熊王の悲劇　弔歌をよんだ人麿　滅亡の地「ささなみ」　第一次近江京こそ「古」　宇治川のほとりにたたずむ人麿　歴史は二度くりかえす　新たな謎

０３９第二章　知られざる万葉集

　０３９　　　一　中大兄の三山の歌

　　　　　中大兄の反歌　二つの神話世界　万葉集にのこる「不倫」の歌　中大兄の沈痛のひびき　「女性優位」か「男性優位」か　証明された「縄文神話」　中大兄の心の葛藤　「高山」と「香具山」

　０７１　　　二　額田王と井戸王

　　　　　額田王と井戸王　「三輪山伝説」を暗示　井戸王はだれか　「おほきみ」の呼称

　０82　　　三　仁徳と磐姫

　　　　磐姫皇后の虚像　嫉妬と絶望　「万葉のダミア」　白髪の老婆　恋の終息　軽太郎女の希望の歌　日本書紀による「盗用」

103第三章　人麿終焉の地「鴨山」をもとめて

　　103　　　一　斎藤茂吉の鴨山「湯抱」

　　　　「鴨山」研究の諸学説　茂吉の「江の川＝石川」説　粕淵説の提唱　湯抱の「鴨山」　茂吉への「頒徳」碑　真実の鴨山をもとめて

　　125　　　二　梅原猛の鴨山「益田」

　　　　茂吉「変説」への批判　丹比真人のよんだ「荒波」　「鴨島」の推論　どこの「鴨山」か　非論理的「我田引海」　「海上刑死」説　未完の対談

　　1４５　　　三　真実の鴨山への到達

　　　　「石見国の石見」　柿本人麿は浜田で死んだ　浜田での出来事　浜田に「鴨山」があった　新たな文献上の裏づけ　人麿は洪水の中で死んだ　石神社のこわされた石神　“神聖なる山"の残石群　森鴎外の遺言状　希望の愛の死の歌　「石川」の河口「石見津」　琴線をかなでる名歌

183第四章　「倭国万葉集」の実像

　　183　　　一　「古集」のしめすもの

　　　「雑歌」＝「その他」　「九州」と「瀬戸内」の欠落　七世紀の「防人歌」の欠落　「古集」に収められていた歌

　　198　　　二　「倭国」から「日本国」へ

　　　「古集」から学んだ人麿　「筑紫歌人」の哀歌　「九州王朝」説の成立　「木佐提言」による裏書き　「倭国」と「日本国」の論証　「続日本紀」にのこされた真実　万葉集にある大きな画期線　「倭国万葉集」と「日本国万葉集」

229第五章　「筑紫への挽歌」と人麿の光栄

　　229　　　一　消えゆく「遠の朝庭」

　　　「大王」と「朝庭」の疑問　「朝庭」＝「筑紫」の用例　「地方の役所」説の非　継体王朝と「みかど」　「みかど」の用字　筑紫の地に「朝庭」があった

　　247　　　二　筑紫の「輝ける日」

　　　「島門」諸説　人麿が見た「島門」　「博多湾頭」　天子の都　白村江による壊滅　カットされた人麿の長歌　失われた「筑紫への挽歌」

　269第六章　人麿の立つ大地

　　269　　　一　「朝臣」の称号

　　　「八色の姓」の矛盾　筑紫から発布された「八色の姓」

　　276　　　二　「天孫降臨」を歌った人麿

　　「天孫降臨」＝「神分」　筑紫への「天孫降臨」権力者の夢　権力者の改削の手　神話と考古学的出土事実との一致　人間としての詩と真実

　293第七章　人麿の運命

　　　「読み人知らず」　丹比真人がささげた挽歌　未知の幻の姿

　303新万葉論 ---- 人麿補考

　303　　　　　一
　　　奥書の欠除　家持の死亡記事　正史から消された万葉集　万葉集の中の九州年号

　312　　　　　二
　　　元歌の後人仮託説の誤り　歌謡劇としての雄略歌　故郷を歌った神武歌謡

　324　　　　　三
　　　まぼろしの筑紫の恋人

　334　　　　　四
　　　「いにしへ」とはいつか　「いにしへ」の訓　神武の熊野迂回潜入行

353あとがき

356【写真解説】

361日本の生きた歴史（十一）

361　　　　　　第一　君が代」論

367　　　　　　第二　「男系天皇」論の虚構

369　　　　　　第三　「万世一系」論の真相

373　　　　　　第四　「海行かば」論

376　　　　　　第五　「人麿の本質」論

1～9　人名･事項･地名索引

*本書は『人麿の運命』（原書房、一九九四年）を底本とし、「はしがき」と「日本の生きた歴史（十一）」を新たに加えたものである。なお、本文中に出てくる参照ぺージには適宜修正を加えた。

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古田武彦・古代史コレクション１１

『人麿の運命』
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2012年 4 月20日　初版第１刷発行

　著　者　古　田　武　彦

　発行者　杉　田　敬　三

　印刷社　江　戸　宏　介

　発行所　株式会社　ミネルヴァ書房

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ISBN978-4-623-06059-7
　　Printed in Japan

写真家より敬白

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　青山富士夫

　著者古田武彦さんは、私が島根県の出身であることを知っておられて、二年ばかり前のあるとき、「石見の国の写真、持ち合わせはありませんか」と問われました。私は、じつは島根県出身といっても出雲のほうで、石見についてはくわしくありません。写真も多くは持っていません。で、「御用向きは？」とお尋ねすると、「こんど石見の国と柿本人麿について文章を書くので、参考につける写真がほしいのです」とのこと。私も石見の国は、かねてからゆっくりと訪ねたいと思っていましたので、これを好機に新しく撮影してさしあげることにしました。一週間ほどかけて、ご指定の場面を撮影して回り、お目にかけると、これが幸い、古田さんの波長とぴったりと合致したようで、「満足以上」との好評を得ました。そこから発展して「人麿論全冊の写真も撮ってください。なにしろ人麿ですから、うんとすばらしい本にしたいので・・・・」という話になりました。
　私は写真家として、かくべつ造型感覚を自負するほうではありません。その私が万葉の歌の写真を撮るとすると、まずその歌の成立した場面にできるだけ近づく、そして歌った人の心情にできるだけ自分の心を重ね合わせて写す　ーーそういう平明といえば平明、いわば馬鹿正直のような一つの方法しか持ち合わせていません。そこで私は、心の中でたえず人麿の歌と問答をかわしながら、各地の歌枕を訪ね歩くことになったのです。
　するとその間に、不思議なことが起こりました。歌の聖（ひじり）人麿、それまではただ仰ぎ見るばかりの巨大な存在であるように感じられていた人麿が、だんだん自分と等身大の人間に見えてきたことです。私ども多くの普通人と、ほぼ相通いあうような人生の喜怒哀楽を生きた人。ただ違うのは、その人生を、普通の人の三倍にも五倍にも鋭敏に感受し、天才的な表現力をもって歌に顕わしました。そういう意味の天才なのであって、けっして私どもと異質な、天才という怪物などではなかったのだ･・・・。人麿という肉身が、時にはある種のいたましいような感情をともなって、私の身近に感じられる気持ちになりました。
　このような経験を得ただけでも、古田さんは私に、たいへんな勉強の機会を与えてくださったものと思います。
　撮影の途次では、近江で長岡裕氏、大和で滝野壽夫氏、石見で木村久三氏、博多では灰塚照明氏、鬼塚敬二郎氏ら、旧来の友人の適切なご忠言、またご援助をいただきました。記してお礼申しあげます。また、はからずも本書が上梓される運びとなりました原書房の社長成瀬恭氏は、私の少年時代からの親友で、空襲下の東京では、巣鴨裏の傾いた二階屋でいっしょに寝起きした仲です。その成瀬氏の経営する出版社でこの本ができたことに、私は今、奇跡にも似た幸せを感じています。

【写真解説】（カラーページ）　略

青山富士夫（あおやま･ふじお）
　　　　　　　　　　　　一九二五年、島根県松江市に生まれる。東京大学文学部卒業後、小学館編集部、写真部を経て、写真家として活躍。日本写真家協会会員。
　　　　　　　　　　　　《主な著書》『高山の花』（毎日新聞社）、『高山植物』（主婦の友社）ほか。

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人麿の運命

ミネルヴァ書房

００１第一章 近江のまぼろし

０３９第二章 知られざる万葉集

０３９ 一 中大兄の三山の歌

０７１ 二 額田王と井戸王

０82 三 仁徳と磐姫

103第三章 人麿終焉の地「鴨山」をもとめて

103 一 斎藤茂吉の鴨山「湯抱」

125 二 梅原猛の鴨山「益田」

1４５ 三 真実の鴨山への到達

183第四章 「倭国万葉集」の実像

183 一 「古集」のしめすもの

198 二 「倭国」から「日本国」へ

229第五章 「筑紫への挽歌」と人麿の光栄

229 一 消えゆく「遠の朝庭」

247 二 筑紫の「輝ける日」

269第六章 人麿の立つ大地

269 一 「朝臣」の称号

276 二 「天孫降臨」を歌った人麿

293第七章 人麿の運命

303新万葉論 ---- 人麿補考

353あとがき

355写真家より敬白 青山富士夫

356【写真解説】

361日本の生きた歴史（十一）

写真家より敬白

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０３９第二章　知られざる万葉集

　０３９　　　一　中大兄の三山の歌

　０７１　　　二　額田王と井戸王

　０82　　　三　仁徳と磐姫

103第三章　人麿終焉の地「鴨山」をもとめて

　　103　　　一　斎藤茂吉の鴨山「湯抱」

　　125　　　二　梅原猛の鴨山「益田」

　　1４５　　　三　真実の鴨山への到達

183第四章　「倭国万葉集」の実像

　　183　　　一　「古集」のしめすもの

　　198　　　二　「倭国」から「日本国」へ

229第五章　「筑紫への挽歌」と人麿の光栄

　　229　　　一　消えゆく「遠の朝庭」

　　247　　　二　筑紫の「輝ける日」

　269第六章　人麿の立つ大地

　　269　　　一　「朝臣」の称号

　　276　　　二　「天孫降臨」を歌った人麿

　293第七章　人麿の運命

　303新万葉論 ---- 人麿補考

355写真家より敬白　青山富士夫