百人一首に収録された古今集の歌、「天の原ふりさけ見れば春日なる、三笠の山に出でし月かも」阿部仲麻呂。古今集の詞書によれば仲麻呂が唐に渡り帰国の際に友人たちとの別れの席で詠んだとされる。中国の友人たちには「かすがなる」より「大和なる」の方がわかっただろう。
仲麻呂が日本から船出のとき壹岐の「天の原」から九州をふりかえり、故郷の春日(市)あたりから東にみえる三笠山=宝満山を歌ったとすると理解できる。奈良の三笠山は低くてここからは月の出は普通では見えない。
『古代史の十字路—万葉批判』(東洋書林後、ミネルヴァ書房)