2012年6月10日

古田史学会報

110号

1、観世音寺・
大宰府政庁II期の創建年代
 古賀達也

補遺
観世音寺建立と「碾磑」
 正木 裕

2、「無文銀銭」
 その成立と変遷
 阿部周一

3、磐井の冤罪IV
 正木 裕

4、「邪馬一国」は
「女王国」ではない
石田敬一氏への回答
 野田利郎

5、書評
『人麿の運命』復刻

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書評 『人麿の運命』復刻

(古賀達也の洛中洛外日記より転載)

古田先生の初期三部作(『「邪馬台国」はなかった』『失われた九州王朝』『盗まれた神話』)は古田ファン必読の三冊ですが、今回は古田先生の万葉集論三部作をご紹介します。
 それは『人麿の運命』『古代史の十字路?万葉批判』『壬申大乱』の三冊ですが、このたびミネルヴァ書房より『人麿の運命』が「古田武彦古代史コレクション」として復刻されました。
 古田先生の万葉論は文献史学の方法論として、「歌」を歴史史料として取り扱う上で貴重な提言が含まれています。ともすれば、様々な「解釈」が可能な万葉集の歌に基づいて、恣意的な研究が見られる分野ですが、歴史学としての古田先生の万葉論のエッセンスを学ぶことができる重要な一冊が『人麿の運命』です。
 その方法論上のキーポイントをちょっと説明します。まず第一は、一次史料としての「歌」そのものと、編纂時に付け加えられた「題」や「左注」を切り離し、一次史料の「歌」そのものを史料批判するという点です。この方法論は歴史学としての万葉集研究を確立した素晴らしいものです。
 第二は、古田学派であれば当然のこととしてご理解いただけると思いますが、万葉集の原文により近い写本を基礎史料として使用するという点です。具体的には「元暦稿本」(有栖川王府本)と呼ばれる万葉集写本を重視されたことです。
 第三は、多元史観・九州王朝説の視点から史料批判するという点です。
 これらの方法論は古田史学の基本的なことですから、こうしたことを学ぶためにも『人麿の運命』の復刻は喜ばしいことです。青山富士夫さん撮影によるカラー写真もふんだんに掲載されており、古田万葉論の理解を助け、真実の万葉の世界を深くイメージすることができます。
 巻末にある書き下ろしの「君が代」論、「男系天皇」論、「万世一系」論などもタイムリーなテーマで、おすすめの一冊です。


 これは会報の公開です。史料批判は、『新・古代学』(新泉社)・『古代に真実を求めて』(明石書店)が適当です。

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